dec 24 2021
世界トップレベル
日本発祥の水産技術「栽培漁業」とは
福山大学 生命工学部 海洋生物科学科
教授 有瀧真人さま
私たちは小学5年生になると、社会科の授業で栽培漁業、養殖、あるいは漁業管理など、水産の資源を持続的に活用するための取り組みを学びます。とはいえ、「栽培漁業とは一体何か?」と問われると、、、もしかすると心もとない、という声が聞こえてきそうです。
「内容については養殖と混同されることも多く、十分理解されているとはいえない」と話すのは、今回お招きしたスペシャルゲスト、福山大学 生命工学部 海洋生物科学科 教授 有瀧真人さん。有瀧先生は書籍「栽培漁業の変遷と技術開発ーその成果と展望」(恒星社厚生閣)にて、栽培漁業を「増殖」と捉え、このように解説されています。
「養殖」とは、海面の一部を区切って優先的に利用できる区画漁業権の漁場を使って「私的な財産」である魚介類を育成する行為である。それに対し栽培漁業を含む「増殖」は、多くの漁業者が入り合って様々な漁具・漁法で操業する共同漁業権の漁場において、皆に漁獲機会がある「無主物」である魚介類(資源)を維持、増大させる手法といえよう。
しかも、栽培漁業はこれまでに多くの技術者がおよそ60年の歳月をかけ、立ちはだかる課題を一つずつ克服しながら、世界トップレベルの水準にまで押し上げた、世界に冠たる日本発祥の水産技術であるのです。
そこで、今回、有瀧先生をお招きし、「栽培漁業」という造語が生まれた歴史的経緯から、栽培漁業の技術開発である、親魚養成・採卵、飼料培養、種苗生産、放流という相互につながっている技術体系を、各工程ごとに丁寧に解説いただきました。
また、有瀧先生の研究室では、Facebookで毎日学生のみなさんが情報を更新しています。沿岸漁業を振興する技術に日々向き合っている研究の雰囲気が伝わると思います。こちらもぜひご覧ください。それでは、有瀧先生へのインタビュー、お聴きください!
沿岸資源培養学研究室(Facebook)
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【書籍紹介】
書籍:栽培漁業の変遷と技術開発
-その成果と展望
(発行:恒星社厚生閣)
1961年に世界初の「栽培漁業」という言葉が誕生してから60年。これまでに得られた知見と技術を整理し、栽培漁業を含む増養殖分野の諸先輩が構築された幾多の成果を継承しつつ、筆者自らの経験と実績に基づきまとめる。親養成、餌料培養、種苗生産、放流効果調査と4部に分け、さらに各論で生物ごとの具体的な技術に話を展開。
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【スペシャルゲストプロフィール】
有瀧真人(ありたき・まさと)
福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授。1959年三重県に生まれる。1985年三重学大学院水産学研究科修士課程修了。社団法人日本栽培漁業協会場長、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長、同研究所 資源生産部長などを経て現職。博士(農学)。